埋もれ木のめ2011年07月10日 09時04分06秒


資料の中に木の目が埋もれてる
一年半ほど一人の男の半生を追っかけているうちにこんなになってしまった。
休みが二日ほどないと資料を開く場所が確保できない。
集めたときにきちんと整理して置けばいいのだが、
自分の部屋には別な物体や本や資料が場所をとっていて片付かない。
各地の市史が鎮座ましますのが電子ピアノのペダルのところ。
仏壇の前には江戸時代の地図や写真集。
応援してくれている方から頂いた本や買った本が150冊を越えた。
図書館で借りて読んだものも同じくらいかもしれない。
頭に残らないので家でコピーをしては綴じ、付箋を貼っては積み上げる。
昨日は久々にほかの家族全員が出払っていたのでこの一部屋を借り切って
タイムマシンに乗って慶応3年に飛んだ。

来客があった。
いきなり現在に引き戻される。
曇り時々雨の予報だったのに、日差しがきつい。
短く刈った髪の毛が少し長めになっている子がドアの向こうにいた。
子供用のマウンテンバイクが玄関の前に止めてある。

「ヒロいる? 今日児童館で一緒に遊ぶんだ」
「出かけていて、まだ帰ってないよ」
「うん、午後から来館するって館長から聞いたよ。だから迎えに来たんだ。帰ってくるまで待っていていい?」
「いいけど」
「どこに行ったの?自転車?歩き?一人で?」
「バスと地下鉄で、一人で駅まで行った」
「ええ、すごい。お金持ちなんだね」
「なんで?」
「ヒロのお母さんは?」
「仕事だよ」
「おじさん、なんで家にいるの?仕事やめたの?」
「いや、今日は休みなんだ」
「休み? 何で家にいるの? 何してるの、家で」
「うーん、本読んだりとか」
「本、読むんだ。ぼくはくもん行ってるよ。勉強好きなんだ。まだヒロ帰ってこないの?」

携帯に電話するが出ない。
メールを打つとバスの中でもうすぐ着くらしい。
近道を通って停留所まで行った。
息子の友人は自転車のギヤを1段にしたから走らなくてもいいよと言った。
バスはなかなか来ない。花を終えた菖蒲が道端で首を垂れている。

「来ないね」
「寝込んで乗り過ごしたかな」
「僕が待っているのに、お仕置きだな」
「児童館で遊ぶの、約束してたの?」
「ううん。学校違うけど児童館じゃ友達なんだ」
「そうなの」
「でもヒロ、僕のこと覚えてるかな。携帯で連絡つかないの?」

メールで「いまどこ」と打つと「家」と返ってきた。
いつもの道をまっすぐ帰ってきたのだろう。
赤いハマナスの匂いが道に漂っている。
ヒロは家で女房が用意したおいた昼食を食べていた。

「よ」
「ヒロぉ、何してんだよ」
「お昼食べてる」
「僕も家に入っていい」

キミはそう聞いているがすでに靴をぬいでる。
「わ、すごい。家の中、物がいっぱい。ねぇここのアパート月いくら?」
「うーん、アパートじゃないんだ」
「ヒロの部屋見ていい?」
「散らかっているから」
「僕だいじょうぶだよ」
「ヒロの兄貴もその部屋使ってるからだめだよ」
「お兄ちゃん、いるの」
「いまは出かけてるけど」
「僕だいじょうぶだよ。冬にヒロとおにいちゃん、遊んでるの見たよ。スキーやっていた。こっちの部屋は」
「うん、おじさんが」
「うわ、すっごい散らかってる。ひっでぇ」
だからさ。
「へぇ、ほんとに本読んでるんだ。厚い本。僕のお父さんももっと厚い本読んでるよ。ヒロ早く食っちゃえよ」

ヒロはマイペースである。
「食べ終わった」
「ほら、さっさと行け」と未来の大物たちを送り出した。
二人の四年生は笑い転げながら家から飛んでいった。
どっちの時代にも落ち着けないまま部屋の中から庭を見た。
葡萄の房が大きくなっている。

コメント

_ BHW ― 2017年04月15日 22時12分45秒

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